INDEX
1.
多汗症とは
2.
多汗症の分類
3.
多汗症の症状
3-1
掌蹠多汗症(手のひらや足の裏)
3-2
腋窩多汗症(脇)
3-3
頭部顔面多汗症(頭部や顔面)
4.
多汗症の原因
4-1
全身性多汗症の原因
4-2
局所性多汗症の原因
5.
多汗症の治療
5-1
外用薬
5-2
内服薬
5-3
腋窩ボトックス(脇ボトックス)
6.
切らないワキガ治療(ミラドライ)

1.多汗症とは?
多汗症とは、全身または局所的に汗が多量に分泌する疾患です。 辛い物を食べたとき、熱いときや運動をしたとき、緊張したときなど、誰でも汗をかきますが、多汗症の方の場合はその汗の量が過度であったり、何もしていないのに多量の汗をかいたりするなど、日常生活に支障がでることがあります。日常生活に支障をきたすほど多量の汗をかく場合は皮膚科の受診をおすすめしております。
2. 多汗症の分類
多汗症は原因の有無によって分類されています。
発汗の原因を突き止めることができる「続発性多汗症」と、明らかな原因となる疾患がないにも関わらず発汗が起こる「原発性多汗症」があります。
さらに、多汗症には発汗する部位によって全身から汗が多量に分泌する「全身性多汗症」と、体の一部(脇、手のひら、足の裏など)のみの汗が多量に分泌する「局所性多汗症」のふたつに分けられます。そして、「局所性多汗症」のうち明らかな原因がない多汗症を「原発性局所多汗症」と呼びます。
3. 帯状疱疹の原因
「全身性多汗症」は文字どおり、全身に多量の汗をかく症状があります。
「局所性多汗症」は部位によってそれぞれ病名があります。
【1】 掌蹠多汗症(手のひらや足の裏の多汗症)
掌蹠多汗症(しょうせきたかんしょう)とは、手のひらや足の裏に過度の汗をかく症状があります。手のひらだけに多量の汗の分泌がみられる場合は手掌多汗症、足の裏だけに多量の汗の分泌が見られる場合は足蹠多汗症と呼ばれることもあります。
1日の中では、寝ている間の発汗はみられず、日中(10時から18時)にかけて発汗が多い傾向にあります。軽度の場合はストレスが高まるなどの特定の状況下で汗が出る程度ですが、重症化すると常に汗が滴り落ちることもあります。

【2】 腋窩多汗症(脇の多汗症)
腋窩多汗症とは、脇の汗に限局した多汗症です。脇の多汗症は、「明らかな原因がないまま6ヵ月以上、局所的に必要な量を超えて汗をかいている」ことに加えて、以下の2項目以上が当てはまることを診断基準としています。
- 最初に過剰な汗がでたのは25歳以下である
- 左右両方で同じように発汗がみられる
- 睡眠中は汗が止まっている
- 1週間に1回以上、多汗の症状が出る
- 家族にも同じ病気の方がいる
- 汗によって日常生活に支障をきたしている

【3】 頭部顔面多汗症(頭部や顔面の多汗症)
頭部顔面多汗症とは、顔面と頭部から異常に多量な汗をかく症状があります。
・頭部多汗症の場合、暑くなくても頭皮から多量の汗を分泌します。
・顔面多汗症の場合、特に額や鼻の周りに多量の汗を分泌します。
頭部多汗症と顔面多汗症は、同時に発症するケースが多くあり、頭部顔面多汗症と呼ばれます。さらに、温度差や緊張によって「赤ら顔」を合併する場合もあります。

4. 多汗症の原因
多汗症の原因は全身性のものと局所性のもので異なります。

全身性多汗症の原因
- 運動、高温、発熱などによる温熱性発汗
- パーキンソン病などによる神経障害に伴う多汗
- 向精神薬、睡眠導入剤、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド薬などの副作用による発汗
- 更年期障害、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、糖尿病、肥満などによる内分泌
- 代謝異常に伴う多汗 ・結核や敗血症など感染症による発汗
- 結核や敗血症など感染症による発汗

局所性多汗症の原因
- 緊張や不安などによる精神性の発汗
- 辛いものを摂取した時の多汗
- 皮膚疾患に伴う多汗
- 胸部交感神経切断後などに起こる神経障害に伴う発汗
5. 多汗症の治療
外用薬
● エクロックゲル5%(対象:わき)
エクロックゲル5%は2020年9月に日本で初めて健康保険の適応が認められた原発性腋窩多汗症の塗り薬です。適応は12歳以上の原発性腋窩多汗症の方となります。
1日1回、脇に塗るだけで、発汗を抑える効果が期待できます。
妊娠中や授乳中の方、緑内障、前立腺肥大症の方はあらかじめ医師に伝えてください。
エクロックゲル5%の副作用には重大なものはありませんが、皮膚炎、かゆみ、湿疹、口の渇き、紅斑などの副作用が現れる場合があります。使用を開始してから、このような症状を感じたときは当院までご相談ください。
● ラピフォートワイプ(対象:わき)
適応は12歳以上の原発性腋窩多汗症の方となります。1日1回、1枚を使って左右の脇に1回ずつ塗ります。1回使い捨てのワイプ製剤なので、簡便で衛生的に使用することが可能です。厚生労働省が保険承認した薬剤なので、市販の制汗剤よりも効果が期待できます。
ラピフォートワイプの副作用として、湿疹、接触性皮膚炎、頻尿、口が乾く、ドライアイなどが報告されています。また緑内障、前立腺肥大症の方は禁忌に該当する薬剤となりますので、予め医師に伝えてください。
● アポハイドローション20%(対象:手のひら)
アポハイドローション20%は日本で初めて保険適用で承認された原発性手掌多汗症の治療薬です。1日1回就寝前に、適量を両手全体に塗ります。起床後に流水でよく手を洗っていただくと、手汗の発汗を抑える効果が期待できます。
アポハイドローション20%の副作用として、湿疹、口の渇き、皮膚炎のような症状が報告されています。尚、アポハイドローション20%は2023年6月に販売開始された新医薬品ですので、1回の診察につき2本の処方(14日分)が上限となります
内服薬
● プロ・バンサイン
プロ・バンサイン錠は多汗症の治療に使用される飲み薬です。
1日3回、食後に内服することが一般的です。医師によっては1日2回を処方する場合もあります。治療効果の現れ方に個人差がありますので、治療開始後2週間から4週間程度経過しても効果を感じられない場合は医師までご相談ください。
プロ・バンサイン錠の副作用として、口の渇き、頭痛、めまい、便秘が報告されています。また使用中に、アレルギー症状が現れた場合は、内服を中止する必要がありますので、医師までご相談ください。
腋窩ボトックス(対象:わき)自費診療
脇ボトックス(腋窩ボトックス)は、ボツリヌス菌から作られた薬剤を両脇に注射することで、発汗を抑える効果が期待できます。1回のボトックス注射で4~9カ月の効果が持続しますので、わき汗でお悩みの患者様は年に1、2回程度の治療で、衣服の汗ジミ、汗の臭いが気になるといった症状の改善が期待できます。*効果には個人差があります。
当院では自費(保険外)として治療が可能です。武蔵小杉皮ふ科のほか、こすぎ皮ふ科で脇ボトックスを行っております。詳しくはクリニックへお問合せください。


◎治療の流れ(施術時間は10分ほど)
- 説明を受け、同意書をご確認頂き、サインをします。
- 施術日をご予約します。
- 治療当日、予約時間の1時間前にご自身でペンレステープを貼ってご来院ください。
- ボトックスの針を刺す箇所をマーキングし、薬を注入します。
痛み軽減のため、両脇をアイスパックで数分間冷やします。 - ボトックスを片方あたり細い針で15~20カ所に注射をします。
<注意点>
・疼痛、腫れ、内出血、アレルギー、表情に違和感を生じる可能性があります。
・強い赤みや腫れが出現した場合は早めに診察に来てください。
・治療当日~1 週間は、長時間の入浴、過度の飲酒、激しい運動は避けてください。
・授乳中、妊娠中、妊娠をお考えの方、筋力低下をきたす神経、筋疾患のある方は対象外です。
・男女ともに少なくとも3か月は避妊をする必要があります。
・わきボトックスは麻酔テープ(ペンレステープ)必須となります。
・2回目以降のボトックス施術は3か月以上空けます。
・18 歳以上から施術が可能です。
ボトックスに関するQ&A
(Q)脇のボトックス注射は痛いですか?
(A)細い針を使用して皮膚の浅い部分へ注射しますので、一般的な注射と比較的すると痛みは少ないと思います。ただし、わきの下という日常生活ではあまり刺激がない部分への注射ということと、複数回にわたり注射をすることもありますので、個人差はありますが痛みを感じやすい患者様もいらっしゃいます。痛みに弱い方や、初めての方は麻酔クリームを塗布することをおすすめします。
(Q)脇のボトックス注射の効果はどのくらいですか?
(A)1回の脇ボトックス注射で4~9カ月の効果が持続します。
(Q)脇のボトックス注射の当日、お風呂に入ってもいいですか?
(A)当日から入浴していただいて構いません。ただし注射した部位は強く擦らないように気をつけてください。もし腫れや発熱などの症状があった場合は、当日の入浴を避けてください。
(Q)脇のボトックス注射後、通院が必要ですか?
(A)通院の必要はありません。腫れや痛みなどの症状が現れたり、内出血のあとが消えなかったりした際は受診をお願いします。